いちご模様

私はお兄ちゃんのためにいちごのつぶつぶをピンセットを上手く*1つかってつぷつぷとって小皿に取り分けてあげていました。お兄ちゃんはピアノの椅子に座って口からガムを摘んで伸ばして遊んでいます。(私の家にはピアノなんてないのにピアノの椅子だけあるんです。不思議だなぁと思いますがおばあちゃんが昔ピアノを叩き割って暖炉の薪にしてしまったからだそうです。本当かどうかはわかりません。)私が百均で2本105円で買ってきたスーパーソーダガムです。お兄ちゃんはガムの中に入ってる粉をぷくぷくの粉って呼ぶ。口に入れたら泡みたいになるからだって。ほんとは重曹っていうんだよって教えてあげたらすっごく怒った。私のお兄ちゃんはちょっと頭が弱いみたい。でも口角に泡をはりつけながら幸せそうにしているお兄ちゃんが私は大好きなんです。あとでマヨネーズの容器を綺麗に洗って錐で穴をあけて水鉄砲を作ってあげよう。この前サランラップの芯をあげてみたら二週間ほど夢中になって遊んでくれたし今度もいっぱいいっぱい喜んでくれるにちがいないです。遊びのレベルが犬みたいなお兄ちゃんはすごくかわいいと思います。お母さんはいっぱい泣いてますけど泣くことなんかないと思うのです。お兄ちゃんお兄ちゃんなのです。
いちごのつぶつぶを全部取ってみたらなんだかピンクのやわらかそうな果肉が除く穴ぼこだらけで、すごく気持ち悪くて全然美味しそうには見えませんでした。お兄ちゃんは「種は土に埋めなきゃいけないから」とかいっていちごをいつも庭に埋めちゃうからわざわざいちごからつぶつぶをとったのに。こんな気持ち悪いいちごをお兄ちゃんは食べてくれるのでしょうか。おずおずとお兄ちゃんにいちごを差し出してみるとお兄ちゃんは「こうすれば気持ち悪くなくなるよ」とボールいっぱいのいちごを手で握り潰してしまいました。なんだかそれは違うような気がするよ、お兄ちゃん。でもお兄ちゃんは嬉しそうに潰したいちごを飲んでくれたのでうれしかったです。幸せは人それぞれです。放っておくと取り除いたいちごの種をお兄ちゃんが庭に埋めてしまいそうなので処分してしまうことにしました。そろそろいちごだけではなくジャガイモとかナスとかアスパラも育ててみたいと私は常日頃から願っていましたし。でも食べられるはずだったいちごの種を棄ててしまうのは忍びないので捕まえておいた女子高生の口に流し込んでみました。すごく嫌がっているみたいですけど。涎が酷いです。吐き出してしまわないよう口を包帯でグルグル巻きにしたら飲み込めないみたいで口をいつまでももごもごしています。いちごのつぶつぶ感がすごくおいしいとか普段言っているのにおかしな人だなぁと思う。
きっとこの女子高生をお兄ちゃんが見つけたら庭に埋めてしまうでしょう。種は土に埋めてしまうのがお兄ちゃんの絶対なのです。種を飲み込んだ人間でも埋めてしまうと思います。なので気をつけてくださいね、と女子高生の手足をくくった縄を取りながらお話するとほふく前進みたいに膝を擦り傷でぐちょぐちょにしながら帰ってしまいました。これで次からはきゅうりとかトマトの種を庭に埋めることができそうです。野菜ができたらマヨネーズをいっぱいかけてお兄ちゃんと丸かじり大会をしてみようと思います。そうしたらマヨネーズの空き容器がいっぱいできていっぱい水鉄砲を作れて二倍も三倍もおいしくて楽しいのです。
そうだ。水鉄砲はお兄ちゃんと一緒に作ろう。きっとお兄ちゃんは大きく穴を開けたほうが強い鉄砲ができると言い張るだろうけどいっぱい時間がかかっても違うということを教えてあげよう。

だからお兄ちゃん。気づかないでね。

*1:じょうずく