「なんて気持ちいいの」

私は馬鹿だから上手く文章なんか書けやしない。とりあえずですます調で書いてれば丁寧な感じになるんじゃないかとおもってるだけで、言葉をつないでもありきたりなどこかで読んだことがあるような文ばかりを書いている。没個性。ほらこうやって次の言葉を考えてるように見せかけて誰かが書いた文章の断片を探してそれで穴を埋めようとしている。一万字書いたらその中の数文字がちょっと上手い表現だったとかそういうのすらできない。私は文章が書けない。馬鹿だから。バナナは黄色いと書いたのに文末ではいつの間にかバナナが赤いことになってるくらいの酷い文章しか書けない。でも私は書くことに憧れている。なんでだろう。読まれたいから。なんで読まれたいんだろう。わからない。とにかく今すごく文章を書きたい気分だから書いてるとかじゃ駄目なのだろうか。駄目とかいいとか誰が決めるんだろうか。自分か。自分なのか。じゃあいいよ思い切り吐露するといいよ。所詮他人の言葉の継ぎ接ぎだけども。もうすでに文章が破綻しかけてるけど書く。書く書く。モチベーションが下がりきるまで書く。隣の老夫婦がアンドーナツをくれたのに部屋に忍び込んで大切にしていた油絵セットをひっくり返したという幼き日の良心の呵責とか好きだった男の子が耳垢を見せてきた情けない思い出とか夢の話とか虹川さんみたいな登場人物が一切動かない創作とかを書けばいい。書いたらあの人のあざとい文章に嫉妬するなんてことはなくなるのだろうか。女の人にじゃなくて文章に嫉妬するなんて。あの人につないでもらって羨ましいなんて思わなくていいのだろうか。私はそう思ってしまったことをクレヨンでぐりぐりに塗りつぶして誤魔化すように書く。書きたい。茶色いクレヨンでフローリングの傷を塗りつぶしても上手く消えてはくれないかもしれないけども、傷ついてる事実は消えないけども書く。書く。そうしたらいつかフローリングがクレヨンになるかもしれないから書く。だから「僕は」「なんて気持ちいいの」「君が好きなだけだ」